ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

05 頭痛3

猿人も苦しんだ「緊張型」

緊張型頭痛は別名「肩こり頭痛」とも呼ばれ、いろんな頭痛ななかでも最も多くみられる。姿勢の異常、首の骨の変形、ストレスなどが原因となる。また、首が細くて頭が大きい方、なで肩の力はこのタイプの頭痛を起こしやすいので注意が必要だ。
例えば、うつむいた姿勢で後頭部の筋肉を長時間収縮させると、筋肉の血流が低下し、乳酸、ピリビン酸などの疼痛物質が遊離する。この物質が後頭部の筋肉付着部の痛み、肩のこり感などを引き起こし、やがて痛みは眼球の後部や側頭部に飛び火して、頭全体へと広がる。
この頭痛の発症時期はあいまいなことが多いが、毎日のように起こる。「頭部を圧迫されるような」「ハチマキで締めつけられるような」持続痛がその特徴だ。いたずらをした孫悟空が、お釈迦様に頭の金輪を締めつけられている状態でもあろうか。
井上ひさしの戯曲「頭痛 肩こり 樋口一葉」のなかにも、肩こりと頭痛に苦しむ一葉の描写が多くみられる。また、エチオピアで発見された約三二〇万年前のアファール猿人の化石が、この頭痛の歴史の長さを物語っている。この化石の背骨を見ると、無理な直立歩行のために生じたと考えられる変形があり、猿人も緊張型頭痛に悩まされていたのかもしれない。従って、この頭痛は直立歩行をする人類の宿命とも言える。未来には、人類の頭は大きくなり、頸の骨は華奢になると考えられており、未来人もこの頭痛に悩むことが予想される。
痛みを軽くするためには、まず姿勢を良くすること、ストレスをため込まないことが大切。多くの場合、こめかみや後頸部に、押えると響きを感じるポイントが存在する。特に後頸部の「天柱」と呼ばれるツボにこのポイントが見つかることが多く、恩師である故兵頭正義・大阪医大教授は、ここに注射することの有効性を唱えた。「天柱」は東洋医学で「足太陽膀胱経」と呼ぶ経路に属することから、ペインクリニックでは、この経路に属するツボへの局所注射を行い、症状を緩和している。また、後頸部を温めると筋肉の血流が改善されるので、ゆっくりと入浴することもひとつの手である。
(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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