ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

19 変形性膝関節症

長年の負担に耐えかねて

平均寿命が延びるにしたがい、「膝(ひざ)の痛み」を訴える患者さんが増えている。中高年でみられるこれら膝の痛みの大部分は、「変形性膝関節症」である。肥満した中年以降の女性に多く、更年期を過ぎた五十歳代で急増する。

膝関節は、体のなかで最大の関節であり、体重という大きな荷重、跳んだり走ったりする時の負担に耐えていることから荷重関節とも呼ばれる。この膝関節は大腿骨(太ももの骨)の下端、脛骨(すねの骨)の上端、膝蓋骨(お皿)、そして、それらの表面を被っている軟骨などから成り立っているが、一日に何万回もの屈伸運動を行うために、軟骨は少しずつ擦り減ってしまう。つまり、変形性膝関節症は加齢によって軟骨が弾力を失い、摩耗することで発症するのだ。

発症早期の症状は、①正座ができない、②階段を降りる際に膝が痛い、③歩き始め、立ち上がる際に膝が痛い(スタートペインと呼ぶ)、④余分な水がたまる、など。これらは摩耗した関節軟骨の一部が関節液のなかに落ち込んで滑膜(膝関節を包んでいる)を刺激することや、骨が直接顔を出すことで起こる。

最大の治療目的は、痛みをとることである。私どもでは、膝関節内にヒアルロン酸ナトリウムと局所麻酔薬を混和して注入している。ヒアルロン酸ナトリウムは、人間の関節内に広く存在する物質であり、関節組織の被膜、軟骨の代謝改善、潤滑効果などが期待できる。さらには、関節周囲へのトリガーポイント注射、鍼治療を併用することで治療効果は格段に向上する。また、安静の保持、膝への荷重を減らすための減量が重要であることは言をまたない。

変形性膝関節症も発症後五年以上を経過すると内反変形(O脚)を強く呈するようになり、重症例では、人工膝関節置換術、脛骨骨切り術(X脚に戻す)などの適応を考えざるを得なくなる。従って、早期治療が極めて重要となる。

とはいえ、どこの病院に行けばよいか分からずに、「膝を抱え込んで」おられる方、「とりあえず湿布薬でも貼っておけば」と放置して悪化させてしまった方も少なくはないはず。まずは専門医を受診して、「膝を交えて」相談されることをお勧めする。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

ページトップに戻る
Copyright © Morimoto Clinic. All Right Reserved.