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46 骨粗鬆症による痛み

納豆食べて予防しよう

「からだ」は、正字で「體」と書くように、本来は強固な骨が支えている。骨は老化とともに徐々に脆(もろ)くなっていくが、この状態が正常範囲を超えて進行するのが、「骨粗鬆(しょう)症」である。今や骨粗鬆症の患者さんは一千万人を超え、さらに増加の一途にある。骨粗鬆症とは読んで字のごとく、骨が「粗く」、大根に「鬆(す)」が入ったような状態になることを指す。圧倒的に中高年の女性に多い。これには元来、女性の骨が華奢(きゃしゃ)であることや、閉経後の女性ホルモンの分泌低下などが影響している。

骨粗鬆症では、様々な骨折を起こしやすくなる。三大骨折と呼ばれる脊椎(せきつい)圧迫骨折、手関節部における橈(とう)骨遠位端骨折、大腿(たい)骨頸(けい)部骨折などである。中でも脊椎圧迫骨折の発生頻度が高い。例えば、尻もちの後に急激に起こった背部痛や腰痛では、背骨(脊椎)が瞬間的に潰れて、潰れた骨の周囲にある神経が刺激を受けている。一方、慢性の痛みの原因は背骨の変形である。脆くなった背骨が日常動作により徐々に潰れることで、背骨が曲って前屈みの姿勢となるのだ。

骨粗鬆症に対しては予防が重要である。まず、食事によりカルシウム(一日600㍉㌘)をきっちり摂り、日光にあたり、散歩などの軽い運動を習慣づけることが大切である。また、骨を丈夫にするビタミンK2を豊富に含んでいる納豆を食べることを勧めたい。ある研究によれば、閉経後女性の血清中のビタミンK2濃度には地域差があることが判明している。例えば東京は約5.3㍉㌘、広島は1.2㍉㌘で、この差異は納豆の消費量に基づき、さらにこの消費量と大腿骨頸部骨折の発症数とは負の相関関係を示すと言うのだ。

いったん、骨粗鬆症による背部痛、腰痛を起こすと、立ち上がることも不可能となり、寝たきりの状態になることも少なくない。現在、女性が寝たきりとなる原因の第一位は骨粗鬆症などの骨折である。これに対しては、刺激を受けている神経を和らげることが重要であり、ペインクリニックでは、腰部硬膜外ブロック、緊張を生じている筋肉への局所注射などを行っている。

余談であるが、無重力空間では、骨の形成低下、吸収増加が起こる。あの向井千秋さんの骨は、二週間の宇宙生活で、2.4%も減ったそうだ。来るべき宇宙旅行時代を備えて、毎日、納豆を食べて、散歩に出かけようじゃありませんか。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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