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Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

67 頸椎椎間板ヘルニア

脊髄を圧迫すると歩行障害も

ホッカホカの体験談を紹介する。

ゴールデンウイーク初日の朝、突然、右肩~上腕に激しい痛みが出現した。子供を連れての旅行を計画していたので検査を受けることもままならず、坐薬持参での辛い連休となった。痛みは徐々に強くなり、右手の握力も著明に低下した。休み明けに頸(けい)部のMRIを撮ると、案の定見事なヘルニアが見つかった。第5、6頸椎間の椎間板が右側に飛び出し、神経根症を呈しているのである。

「あぁやっぱりな、ボクの診断どおりやなぁ」と妙に感心した次第である。

その後、頸部硬膜外ブロックと牽引を受け、痛みはやや軽減しているが、この原稿を書くのに四苦八苦している。首にポリネックを巻いているので、診察室での会話は、まず「センセどないしやはったん?」から始まる。ひとしきり自分の病状を説明したあと、患者さんの話題に移るのである。終了後には、患者さんから「お大事に」と言われる始末だ。トホホの極みである。

さて、ヘルニアとは線維輪(椎間板の周囲を構成している)の後方に生じた亀裂から髄核(椎間板の中心)が後方の脊柱管に脱出する状態を指す。四十~五十歳代の男性に多い。私のような後外側へのヘルニアでは神経根症としての症状、つまり障害を受けている神経が支配する領域での放散痛やシビレをきたし、咳やくしゃみで増悪する。一方、後正中へのヘルニアでは脊髄の圧迫によって脊髄症による症状を引き起こす。上肢のシビレと巧緻運動障害、さらには下肢のシビレ、歩行障害、場合によっては排便、排尿障害などである。

自然退縮例も報告されてはいるが、神経根症に対してはまず保存的治療を行う。全身安静と牽引療法、ポリネックの使用、非ステロイド性鎮痛消炎薬の内服などである。ペインクリニックでは、主として頸部硬膜外ブロック、星状神経節ブロックを行っている。なお、これらの治療に抵抗し高度の麻痺を伴うもの、脊髄症の一部では手術適応となることもある。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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