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Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

76 トリガーポイント注射

「痛みの悪循環」遮断し、血流改善

私どもの施設で、最もよく用いる治療手技は、トリガーポイント注射である。トリガーポイント(疼痛(とうつう)誘発点)とは、筋肉内に触れる過敏点であり、「圧迫や針の刺入、加熱または冷却などにより関連する領域に痛み(関連痛)を引き起こす部位」と考えられている。したがって、単に押さえると痛い部位(圧痛点)ではない。

トリガーポイントは直接的な外傷や慢性的な筋肉の疲労などによって発生する。痛みを自覚している領域に多く見らえるが、かけ離れた部位に見いだすこともある。なお、その多くが東洋医学でのツボと一致することが確認されている。

このトリガーポイントの概念を利用した治療法が日常的に行われているが、なかでも鍼灸(しんきゅう)治療、低周波刺激、マッサージは広く知られるところだろう。

さて、トリガーポイント注射であるが、一般的には局所麻酔薬(ネオビタカイン)と副腎皮質ステロイド薬をトリガーポイント内へ注入する。これによって「痛みの悪循環」を遮断して血流を改善し、筋肉の緊張を和らげ、体内に存在する痛みを作りだす物質を洗い流すのである。どんな痛みであれ、痛みの悪循環によって慢性痛が形成される以前に、処置を行うことが肝要なのである。

本注射法に適応されるのは緊張型頭痛、肩こり症、筋筋膜性腰痛症といった筋筋膜性疼痛症候群、線維筋痛症候群、他の疾患によって筋肉に二次的な緊張を生じている状態が挙げられる。

二次的なものとしては、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊(せき)柱管狭窄症では脊柱起立筋に沿った痛みを認める。さらに、がん患者さんの約60%で筋筋膜症の痛みを伴うとの報告もある。これらの痛みは基礎疾患の治療なくしては完治しないが、筋肉の緊張をとることで十分な軽減を得ることも少なくはない。

ペインクリニックで用いる治療手技のなかで、本注射法は初歩的なもののひとつではあるが、最も普遍性に富んでおり、かつ極めて治療効果の高い治療法といってよいだろう。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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