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Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

78 星状神経節ブロック

交感神経を麻痺させ血流を改善

自律神経には交感神経と副交感神経があり、呼吸や脈拍、血圧、体温、発汗などの機能はこれらの神経のバランスによってコントロールされている。例えば、交感神経が興奮すると、気管支が拡張し、血管が収縮して血圧は上昇、汗をかき、目玉はまん丸に見開かれ、体毛が立つ。「怒髪天(どはつてん)をつく」は、交感神経の緊張によって立毛筋が収縮した状態を形容しているのである。また、何らかの痛みがある場合にも、交感神経への刺激により血管が収縮し、血液の流れが悪くなる。

さて、星状神経節だが、これは首(第七番目の頸(けい)椎(つい)の高さ)に左右一対存在する長さ約三センチの交感神経の合流点(神経節)であり、主に頭部、顔面、上肢、上胸部などの血液の流れを調節している。

星状神経節ブロックでは、その神経節に局所麻酔薬を注入して交感神経の機能を一時的に麻痺させ、血流を改善する。わが国では、昭和三十七年以降、従来の手技の改良により、ペインクリニックにおいて積極的に用いられるようになった。

適応は、頭部~胸部の痛み、しびれ、麻痺などをきたす疾患であり、頭痛や帯状疱疹(ほうしん)、帯状疱疹後神経痛、反射性交感神経ジストロフィ―、幻肢痛、上肢の血流障害などが挙げられる。突発性難聴、メニエール病、アレルギー性鼻炎、網膜中心動静脈閉塞症もその対象となる。

武蔵野病院名誉院長の若杉文吉氏は、『星状神経節ブロック療法』(マキノ出版)の中で、星状神経節ブロックにより視床下部(生命の維持に重要な自律神経、ホルモンの分泌、免疫機能を調整している)への血流が増加し、自然治癒(ゆ)力や恒常性維持機能(ホメオスタシス)が高まることから、癌(がん)の発生予防を含めてその適応は極めて広い、としている。事実、施行十五分後に、頭部へ向かう血流が約二倍になるとのデータが示されている。

私もこの神経ブロックを受けた経験があるが、局所麻酔薬が注入された途端、顔面と手のひらがぽかぽかとして、汗が完全に出なくなったことには驚いた。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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