Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック
81 月経困難症
ストレス、自律神経の変調も関与
平成十四年度の厚生労働省の調査によると、月経期間中に、二十~四十歳代の女性の27%が何らかの鎮痛薬なしに普通の生活を送ることができず、同様に27%が半年の間に一日以上仕事を休んだり、勤務時間を減らしたりしていたという。
生理周期に伴って子宮の内膜がはがれ落ちて出血をみるのが、月経である。そして、この月経期間に一致して下腹部や腰に痙攣(けいれん)するような痛み、腹部膨満感、食欲不振、吐き気、頭痛、脱力感などをみるものを「月経困難症」と呼ぶ。
この月経困難症には、子宮筋腫(しゅ)、子宮内膜症に代表される器質性のもの、原因となる異常を認めない機能性のものとがある。
機能性月経困難症は、子宮内膜がはがれるときに作りだされるプロスタグランジンという物質が子宮を収縮させることが原因と考えられている。加えて、ストレス、月経に対する嫌悪感といった心理的因子、ホルモンのバランスの乱れ、自律神経機能の変調も関与する。思春期から二十歳前後に発症することが多く、月経初日から二日目の出血量の多い時期に症状が強い。
一般的な治療法としては、プロスタグランジンの合成阻害作用をもつ鎮痛薬、子宮の収縮を抑制する薬物、抗不安薬などが用いられる。
ペインクリニックでは星状神経節ブロックを行う。私自身も多くの患者さんにこのブロック療法を行ってきたが、一回の治療で次の月経期間を痛みなく過ごせたとする方が少なからずおられることには驚いた。通常は十~二十回を目安としている。
その他、いわゆる“血の道症”に有効とされる漢方や(駆瘀(くお)血剤(けつざい))の投与、関元(かんげん)、三陰交(さんいんこう)などのツボへの鍼治療の併用も有効である。
なお、月経困難症と区別すべき病気として月経前症候群がある。月経を迎える二週間前から前日にかけて下腹部や腰の痛み、イライラ、意欲の減退といった症状が集中し、月経の開始とともに消失する。月経困難症は出産後に転快するが、月経前症候群では症状の憎悪をみる。
(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)