ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

80 慢性会陰部痛

痛みの持続、原因不明でも治療を

会(え)陰(いん)部とは肛門と外陰部との間を指す。この部位には泌尿器系と生殖器系の器官があり、外科、泌尿器科、婦人科のさまざまな病気によって痛みや違和感を生じることがある。しかし、これらの専門医での診察によっても原因が特定できない、または原因となる病気はすでに治っているにもかかわらず痛みが持続することがある。これらは「慢性会陰部痛」と呼ばれる。

担当医からは「もう病気は治っているのだから痛いはずはない」との説明を受けられ、どの病院を受診してよいのかわからずに“ドクターショッピング”を繰り返しておられるものと推察する。

一八三一年、婦人科領域では、すでにこれら原因不明の会陰部痛を「被刺激性子宮」との名称でとらえており、以後、原因不明のものは心因性の痛みとして取り扱われるようになった。その考え方は百七十年以上を経た現在でも根強く残っている。

特に多く見られるものに、痔核や直腸癌などの手術後に発生した痛みがある。その他では、順天堂大学麻酔科ペインクリニックの井関雅子医師が、一過性直腸神経痛、会陰下垂症候群、骨盤うっ滞症候群、間質性膀胱炎などが関与すると指摘している。しかし、そのいずれにも当てはまらない痛みも数多く存在する。

ペインクリニックでは、たとえその原因が不明であっても、まずは痛みの軽減のための治療を行う。痛みを長期間にわたって自覚していると、神経がさらに過敏となり痛みが増幅されて脳に伝えられるからである。

これらの点からは、痛みの伝達を遮断する神経ブロックの施行意義は大きい。私どもの施設では、腰部・仙骨部硬膜外ブロック、上下腹神経叢ブロック、さらには肛門部や外陰部の交感神経に由来する痛みに有効な不対神経ブロックなどによって対処している。

また、慢性会陰部痛の患者さんの多くが、頻尿に悩まされていることから、抗うつ薬やα受容体遮断薬(高血圧治療薬の仲間)と呼ばれる薬物などを併用している。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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