Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック
85 テクノストレス眼症
OA作業による眼の疲れが原因
「一日中パソコンに向かっているために眼が疲れちゃって…」と訴えらえる方が増えている。この眼の疲れに、頸(けい)肩(けん)上肢の痛み、イライラなどを伴うようならば要注意。これら一連の症状をきたすのが「テクノストレス眼症」である。
テクノストレス眼症は従来、「VDT(ビジュアルディスプレーターミナル)症候群」と呼ばれていた。ワープロやパソコンなど、ディスプレーやキーボードといった機器を使用する作業全般がVDT作業であり、VDT症候群とはこの作業に従事する方に特有の健康障害を総称したものである。
VDT作業による障害としては眼の疲れ、かすみ、痛み、充血、視力低下以外に、頭痛、肩こり、後頸部~手指の痛みやしびれ、めまい、吐き気、生理不順、さらにはイライラや不安、抑鬱(よくうつ)といった精神神経症状など枚挙にいとまがない。
その原因では、①眼の毛様体筋(水晶体の厚さを変化させて焦点を調節する)の障害、②ドライアイ(涙液分泌減少症候群)の二つが大きい。②は、まばたきの減少に加えて、正面を向いて眼を大きく見開くことによる角膜の乾燥に起因し、眼のコロコロとした違和感をきたす。
VDT作業に従事していて何らかの眼の症状を感じたら、まずはディスプレーから離れることである。それが無理ならば、ディスプレーに向かう時間を減らすことである。また、①に対してはVDT専用眼鏡の使用、②では保水効果のある点眼薬の使用、室内の湿度を調節し、エアコンの風が直接眼に当たらないように、ディスプレーの位置を少し下方にすることである。
私どもの施設では、眼(特に網膜)の血流を増加し、頸肩上肢の痛みを軽減する星状神経節ブロック、眼の奥の痛みをとる後頭神経ブロックを行っている。さらに後頸部にある“風(ふう)池(ち)”、眼周囲の“太陽”や“攢(さん)竹(ちく)”といったツボへの鍼治療を併用している。眼の疲れに悩んでおられる方は、これらのツボをつまようじで連続的に刺激されるのもひとつの手ではある。
(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)