Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック
101 変形性股関節症
進行につれて 痛み持続的に
股(こ)関節の周囲に痛みを生じる病気には、乳児期に発見される「先天性股関節脱臼(だっきゅう)」、幼少時期の「ペルテス病」をはじめとして、「変形性股関節症」、「大腿骨頭壊死」、さらには高齢者の転倒事故でみられる「大腿骨頸(けい)部骨折」と、さまざまなものがある。
この中で、変形性股関節症は、高齢者でみられる一次性(加齢性の変化による)、他の病気やケガに続発して起こる二次性に分類されるが、わが国では二次性のものが多い。二次性のものの原因としては、先天性股関節脱臼、臼(きゅう)蓋(がい)(股関節の屋根の部分にあたる丸いくぼみ)の形成不全が90%を占め、女性に多い。
この変形性股関節症では、関節の軟骨がすり減り、関節のすき間が狭くなって痛みを生じるが、その程度により四期(前期・初期・進行期・末期)に分類される。レントゲン写真上は全く異常を認めないものが前期、軟骨が部分的にすり減って関節のすき間がわずかに狭くなっているのが初期。
進行期になると、軟骨が広範囲に障害されて関節のすき間が明らかに狭くなり、骨(こっ)棘(きょく)(骨のとげ)が形成される。末期には、軟骨が完全に失われて関節のすき間も消失し、階段の昇り降りが困難、靴下が履けない、といった状態になる。さらには廃用性萎縮のために大腿骨が細くなってしまうこともある。当初、痛みは動作の開始時に限られるが、進行するにつれて持続的なものとなる。
治療は、初期では非ステロイド性抗炎症薬の投与と筋力強化のためのトレーニングが主となるが、進行期―末期には股関節を矯正する「骨切り術」、「人工股関節形成術」などが行われる。なお、痛みが股関節を取り巻く滑(かつ)膜(まく)や関節包の炎症が主となって引き起こされている状態ではペインクリニックの適応となる。
ペインクリニックでは、股関節周囲でのトリガーポイント注射、閉鎖神経ブロック、外側大腿皮神経ブロックなどを行っている。また関節内へのヒアルロン酸や局所麻酔薬の注入が有効なことも多い。
(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)