Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック
03 頭痛1
多くは脳自体から発生しない
米国で行われた調査によれば、成人の73%が、一年間に何らかの頭痛を経験しているとある。頭痛は、誰もが、日常的に経験する痛みの代表である。風邪をひいて熱が高くなれば頭重感とともに頭痛が起こり、肩こりがひどい時には後頭部の痛みを自覚する。さらには二日酔い、ストレスによる頭痛など、現代人にとって頭痛の種は尽きない。
わが国においても、相当数の方が頭痛に悩まされていることは想像に難くないが、適切な治療を受けているかといえば、そうではないとするアンケート結果がある。多くの方々が「何もせずにじっと耐えている」「薬局で買った薬を服用している」と答えているのだ。このような状況から、健康をテーマにした雑誌は、頭痛の特集を頻繁に取り上げ、平成九年一月にインターネット上で開設された「頭痛大学」へのアクセス件数はすでに五十万件を超えている。
さて、頭痛を訴えて病医院を受診した場合にも然りである。医師に「どこが痛いのですか?」と尋ねられても、「この辺りですかねえ」としか答えられなかった方も少なくはないはずである。なぜならば、頭痛は胃潰瘍や胆石症と同じく内臓痛なのである。例えば、包丁で指先を傷つけ時や熱湯を体に浴びた時などには、痛みが存在する部位を明確に指摘することが可能である。一方で、胃潰瘍では空腹時にみぞおちの辺りに「キリキリとした」痛み、胆石症では背部に放散する痛みを自覚する。このように内臓に異常が生じた場合には、痛みが存在する部位が漠然としていることが多い。これは内臓からの痛みの伝達経路が、皮膚などからの経路とは異なるからである。従って、頭痛の場合にも痛みの局在がはっきりしないことが多いのである。
頭痛の多くはC線維と呼ばれる神経線維によって伝えられるが、多くは脳自体から発生するものではない。頭皮に分布する細い動脈、頭蓋骨を包む筋肉、頭蓋骨の内外に枝を出している末しょう神経、脳の表面を覆う硬膜などが頭痛を引き起こすのである。さらには、頭痛を引き起こす部位によって痛みの性質は異なる。従って、頭痛診断の第一歩は痛みの性質を的確に把握することにある。
(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)