ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

38 痛風

ご用心 酒、鍋、ゴルフ、太った中年

「寒いのはかなわんが、鍋で一杯ってのは幸せだよなあ」との声が聞こえる季節となった。で、鍋料理のシーズン到来である。私も鍋料理、特に鱈の白子、あんきもには目がないクチである。しかし、これらを食することで増悪する病気がある。「痛風」である。

痛風はプリン代謝の異常で血液中の尿酸が増加し、尿酸の結晶が関節内に析出して急性の関節炎を引き起こす病気である。病名に「病」との文字が入っているとおりに痛い。また、東洋医学では体の深いところに障害を受けたものを「風」と言う。

突然、「万力で締めつけられるような」激烈な痛みが起こり、一晩で関節が赤く腫れあがる。足の親指(特に左側)の付け根に多く発生し、痛みの発作を繰り返す。なお、関節炎が慢性期に移行すると、歩くときに鈍い痛みを感じる程度となるが、手、肘、膝などの関節にも痛みを引き起こす。ゴルフなどによる足への負担や飲酒、ある種の降圧剤(サイアザイド)の服用が発症の誘因となる。

わが国では、戦後の食生活の変化に伴い激増の一途をたどり、現在約四十万人の患者さんがおられるとされている。さらに痛風予備軍である高尿酸血症にいたっては数百万人を数えるのである。

治療は、痛みを予感したときにコルヒチン(イヌサフランから採取される)を内服することが第一である。紀元前一五〇〇年のパピルスのなかに、コルヒチンを含むサフランについての記載がある。その他、痛みに対しては消炎鎮痛薬の服用が効果的であるが、アスピリンは尿酸値を上昇させるので用いるべきではない。また尿酸の排泄(はいせつ)能力が低下している場合にはユリノーム、尿酸の産生過剰が考えられる場合にはザイロリックを処方する。ペインクリニックではこれらの薬剤を処方すると共に、関節内へ局所麻酔薬とステロイド薬の注入を行う。

しかし、なによりも食生活に気をつけることである。プリン体を多く含む肉、きも、白子、さらにはアルコールを控えてほしい。雑炊もよくない。鍋料理のあとのスープは具から流れ出たプリン体であふれかえっているのだ。

酒が好きで鍋が好きでゴルフが好きな太った中年のあなた、ご用心、ご用心。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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